AEDの基本情報とBLS(一次救命処置)の手順

プロフィール

日本赤十字社 齊藤様

事業局 救護・福祉部 健康安全課長

赤十字救急法指導員
1992年に日本赤十字社入社。 救急法等の講習普及のほか、災害救護、防災教育等の業務に従事のかたわら、赤十字救急法指導員として、広く一般市民に対する一次救命処置や応急手当の講習指導も行っている。

株式会社ヤガミ 手嶋

AEDマーケティングセールス部 AEDマーケティング担当

2010年に株式会社ヤガミ入社、以降AED販売・企画・マーケティングに10年以上従事。 オンラインでの対応も含めて、年間で100回以上のAEDに関する取扱い説明会も実施。 日本赤十字社救急員養成講習受講経験あり。

AEDが一般解禁になり20年。
いま求められているAEDに関する知識や今後に課題について

AEDが医療従事者ではない一般市民でも使用できるようになった2004年7月から20年を迎えました。
日本は現在AEDの設置数が世界トップクラスとなった一方、AED使用率はわずか4.3%と低い状況が続いています(※1)。

今後はAEDを実際に使用する事に関する重要性が高まっているなか、講習を通じて健康安全に関する知識・技術の普及と啓発を行っている日本赤十字社様に、これまでのAEDに関する講習や取り組み、今後の課題についてお話をお伺いしました(2024年8月)。

※1 「令和5年版 救急・救助の現況」総務省消防庁

AED(自動体体外式除細動器)とは

AEDについて知らない人のためにまずは簡単にAEDについてご説明いただけますでしょうか。

日本赤十字社 齋藤様

突然の心停止の中で多くみられる心室細動などといった致死性の不整脈に対して、手当てとしてどうするか、その一つが心臓への電気ショックです。以前は、この手当を「AEDを用いた除細動」という言い方をしていたのですが、国内の統一指針でも一般の方へ説明するには「AEDを用いた電気ショック」という言い方になっており、つまりAEDとは、心臓に電気ショックをかけるための機械です。

そもそもAEDは高度管理医療機器になりますので、医療従事者の方、資格のある方しか使えなかったのですが、2004年の7月に法律の解釈がかわったことにより、一般の方でも使えるようになりました。

医療機器なので繰り返し使うと医業にあたる、医業というのは、医師しかやってはいけませんという、医師法の規定があるんですけど、一般の方が使うAEDは、たまたま居合わせた人が反復継続することもないことから、「市民が使っても医師法にも抵触しませんよ」という解釈が厚生労働省から示されたという事で、何かAEDが使えるような新しい法律や決まりができたというものではなく、使えるようになった機械なんです。

一般的にはよく2004年の7月に「解禁になった」みたいな言い方をしますよね。

ヤガミ 手嶋

いわゆる解禁から20年経って、今はかなりAEDという存在そのものの理解は進んできたと思います。

展示会等でAEDを展示していると「あっ!AEDだ!設置してますよ。」という声や、

「AEDがあればいいなと前から思っているんですが、まだ設置できていなくて…」といった反応が多く、

「AEDって何ですか?」という人はほとんどいなくなりましたね。

心室細動にはAEDによる電気ショックが必要

先ほどのお話の中で、致死性の不明脈である心室細動という言葉が出てきたと思いますが、この心室細動について、もう少し具体的に教えていただけますか?

日本赤十字社 齋藤様

突然の心停止というのは、心室細動であることが多いんですけど、どんな状況かと言えば、講習などでは「心臓が細かく震えだす」という言い方をしています。これがいわゆる心室細動という不整脈ですね。

心臓が痙攣したような状態をイメージしてください。そうすると何が困るのかというと、心臓はポンプ作用でもって、全身に血液を送り出しているのですが、そのポンプ作用を果たせなくなり、そうなると血液が循環しなくなる、そうなると特に脳は、5分以上経つと不可逆的損傷で後遺症などが残ってしまう可能性が高まります。

そういった心臓が痙攣してポンプ機能を果たせなくなっているような状態、すべてではないですが、突然心停止の場合はそういったケースが多いですよという事を、講習でもお話をしています。

 

ヤガミ 手嶋

なるほど。そういった説明だと非常にわかりやすいですね。

心室細動が事例も多くて、一般的によく知られている不整脈ではありますが、無脈性心室頻拍(無脈性VT)も心室細動同様に致死性の不整脈の一種で、AEDが必要になる不整脈の一つです。

心室の筋肉が非常に早いリズムで心臓を収縮し、一分間に100回以上の拍動を3連続以上繰り返す場合は心室頻拍と呼ばれて、この発作がおこると、心室細動と同様に心臓がポンプとしての機能を十分に果たせなくなるため、重症な症状を引き起こします。

最近はAEDに関する情報が増えていろいろと調べやすくなったこともあり、まれに無脈性心室頻拍(無脈性VT)についてまで知っている方もいて驚きます。

AEDの設置場所

AEDの設置場所についてはどのようなところがありますか

日本赤十字社 齋藤様

現在日本ではAEDが約67万台設置されていると言われています。
具体的にどこにあるかという情報については、すべての情報がそこにあるわけではありませんが、日本救急医療財団全国AEDマップや、AED財団のAED N@VIのほか、AEDの設置状況が登録されているマップが複数種類あります。

日本赤十字社本社だと、1Fの受付に1台、建物は7階建てなのですが、4階、7階に1台ずつあります。ただし、建物が東と西に分かれていて、1階と7階しか連絡通路がないため、東は4階、西は7階に設置をしていますが、正直これではまだ少ないと思っています。1Fの一番人が集まる棟に1台、あとは東西で2台ずつはおくべきだと。

できればさらに、外にも1台置ければ良いですね。

ヤガミ 手嶋

増やした方が良いというのは、倒れてから3分以内の電気ショックという考えですよね。

日本赤十字社 齋藤様

1秒を争いますからね。1分で取りに行く、1分で戻ってくる、実際にAEDを使用するために1分、それで3分ですからね。そのため、現在のこの設置状況も考え直さなければと考えています。

 

ヤガミ 手嶋

ただ現実的には一つの建物で1台の設置がまだまだ多いので、この設置事例はAEDが多く設置されている方だと思います。ようやく最近は学校でも2台目、3台目の設置し始めたところが増えてきたというところですからね。以前までは1台あれば良いという感じでした

日本赤十字社 齋藤様

特に今年衝撃だったのは、総務省消防庁から出ている「令和5年版 救急・救助の現況に」のデータで、ついに現場に救急車が到着する時間が約10.3分と、10分を超えましたよね。AED解禁時の20年前は平均約6分半程でした。
生存退院率は1分間で約7~10%落ちますから、5分以上経ってしまったら助からない可能性も高くなります。やはり救急車を待っているだけでは厳しいです。

その時でもすぐ居合わせた人が対応する事が大事で、別にAEDを使ったり対応する人がプロでも素人でも関係ない、とにかく大事なのは時間なんです。知らない人でもすぐAED使う、その方が救命の効果が高いですからね。

ヤガミ 手嶋

20年前と違って、今はもう救急車を待っているだけでは完全に間に合わないという事ですよね。

日本赤十字社 齋藤様

平均で約10分ですから、もちろん地域差などもありますので、早い時は早いのかもしれませんけどね。

基本的には10分以上来ないと思って、そういう前提で対応したほうがいいですね。

ヤガミ 手嶋

しかもこの10分は「通報してから」の時間ですからね。

日本赤十字社 齋藤様

10分は来ないと思って準備をしましょうという事ですよね。そのためにはAEDの場所をしっかりと認識している事も重要です。

私もどこかへ行った時には、必ずまずはその建物のどこにAEDがあるのかを確認するようにしています。AEDの場所と非常口、この2つは必ずどこかへ行った時には確認をします。
あとは自分の行動範囲ですね。例えばここから地下鉄の駅までの間ではどこにAEDがあるのかというと、愛宕警察であったり、信号を渡ったところに別館の日赤ビルがあり、そこの1Fにもあります。そこまでいけば、次は駅に行けば、駅にAEDがあります。

自身が行動する範囲の中でも、どこにAEDがあるのかを把握している人はまだまだ少ないですよね。あなたの一番自宅から近いコンビニはどこですか?と聞くと、「あそこです」「ここです」とすぐに答えられるのですが、みなさんの自宅から一番近くにあるAEDは?と聞かれても、なかなかすぐに答えられる人は少ない。ですが、コンビニの数とAEDの数では、圧倒的にAEDの方が多いんですよね。

マップがあるのでそれで調べられるといった事もありますが、すでにそのAEDを廃棄してしまっているなど、マップデータ精度の問題もあります。この精度を上げる取り組みもやってはいますけど、例えば夜中に取りに行ったときに誰もいなければ使う事はできないでしょうし、やはり目視で自分の周りのAEDはここにある、ここにあると、どこに行ってもとは言わないまでも、自分の普段の行動範囲の中では、どこにAEDがあるのかなどは把握できればいいなとは思います。

ヤガミ 手嶋

AEDが設置されていても、実際に必要な時にどこに取りに行けばいいのか、建物の中のどこにあるのかも重要なポイントですよね。

『日本救急医療財団 全国AEDマップ』には、AEDの設置者や設置管理者から日本救急医療財団のホームページへAEDの設置登録情報を公開することに同意してもらったAEDの情報が掲載されていますが、最近の事例としては、北大阪消防指令センターの指令管制システムに財団全国AEDマップのAED設置登録情報が連携されて、119番通報受信時に通報者へ近隣に設置されているAEDの設置情報が案内できるようにAED設置登録情報に関する協定を締結するような動きもあります。

BLS(一次救命処置)の手順

AEDが必要な場面では心肺蘇生(CPR)も非常に重要になると思います。そもそも心肺蘇生とは?というところから改めて教えていただけますでしょうか。

日本赤十字社 齋藤様

心肺蘇生、つまり心臓と肺ですよね。血液循環を促す心臓の動き、それから呼吸を司る肺の機能、それが何らかの影響で機能を停止してしまったので、それを補助するみたいな考え方ですよといったような説明をいつもしています。

基本的には心臓の動きの代わりになる胸骨圧迫、それから、コロナ禍禍以降、現在は省略しても良いとされている人工呼吸、これは通常であれば呼吸をしていれば肺で酸素化された血液が心臓に送られて、そこからポンプ機能で全身に送られますが、そこの酸素化を補助する人工呼吸、この胸骨圧迫と人工呼吸が、いわゆるAEDが始まる前からある心肺蘇生で、AEDが解禁になってからはそれにプラスして、一次救命処置、BLS(ベーシックライフサポート)という言い方をするのですが、一次救命処置の中にAEDを使った除細動(電気ショック)が含まれるといったところです。

あともう一つ一次救命処置に含まれるのが気道異物除去ですね。のどに異物を詰まらせてしまい窒息をする、そういった時はその異物を取り除かなければならないので、この気道異物除も、一次救命処置に含まれています。

日本赤十字社は救急法基礎講習として、大きく分けてこの3つ(心肺蘇生、AED、気道異物除去)を学べる内容としています。

救急蘇生法

救急蘇生法

 

ヤガミ 手嶋

ありがとうございます。では一次救命の手順についても教えてください。

日本赤十字社 齋藤様

一次救命処置の手順について、講習の時に強調しているのは、 人を助けるんですけど、基本的には自分自身の安全をしっかりと確保する、それがきちんと確認できてから救助をしましょうと。

すなわち、周りの状況などが危ない状況であれば、場合によっては救助できないといったことだってある、まずは自分自身の安全を確認して、周囲の状況を確認して、「安全だ」という事で初めて、救助を始めてくださいといった事をお伝えしています。

日赤の講習でも人を助ける方法みたいな言い方をするのですが、自己保全というものが前提として一番大事なんですよね。

やはり自分自身がけがをしてしまったら、人を助ける事もできませんよね。自分が救助者なのに、自分が傷病者になってしまったら、救助者が誰もいなくなってしまいますので、そこはよく強調してお伝えしています。

そのうえでしっかり手順に入っていくといった感じですね。

ヤガミ 手嶋

まずは「安全の確認」ですね。

日本赤十字社 齋藤様

安全が確保できたら、それから傷病者へ近づいていきますが、その時にはまだ心停止かはわからないわけですからね。まずは全身の状態を俯瞰的にしっかりと観察します。

特に見るべきポイントは外傷ですよね。大きな出血がないか。心停止もそうですけど、大きな出血も命の危険につながる状態ですので。他にも四肢の変形がないかなど、しっかりと観察したうえで、ひとつひとつ落ち着いて手順をすすめていきます。

しっかりと観察をして、判断をして、必要であれば手当をする、それからまた次の手当てに進む、、、という流れですが、観察が大事という事を良く伝えています。

AEDを使うにしても、心肺蘇生をするにしても、観察をして、判断をして、手当する。

病院で医師が診察をして、診断をして、治療をする、といったように、これと同じような流れですよね。

講習でも、応急手当は観察に始まり、観察に終わるなんてことは良く言いますし、手当の途中も必ず観察をする、すなわち、AEDを装着する時もそうですし、心肺蘇生をする時にもしっかりと顔を見なさいと言うんですね。

もしかして途中で蘇生しているかもしれない、しっかりと観察を続けるという事が大事です。

ヤガミ 手嶋

すべての手順において、傷病者を観察する事が大事なんですね。

日本赤十字社 齋藤様

全身の観察をした後は、肩を軽くたたきながら耳元で大きな声をかけて、傷病者の反応を確認します。

反応無しと判断した場合、もしくはその判断に迷う場合は、それが心停止なのか呼吸停止なのかを判断する前に、とにかく反応がなければ、協力者を要請します。

手当以外でも、協力者を呼ぶという事は大事です。 一人でできる事は限られていますからね。応急手当では協力者が多ければ多いほど良いです。

この処置やっているときにやることがないのであれば、声掛けをするとか、周りの人の目線を避けるとか、いろんな役割があり、声をかけるだけでも手当てですといった事は良く言うんです。

AEDでも心肺蘇生でも、協力者が多いほど良いですね。

ヤガミ 手嶋

協力者を求める事も重要なんですね。確かに一人で対応するよりも心強いので、救助者の不安も和らぎそうです。

日本赤十字社 齋藤様

そのあと、まずは協力者に119番通報とAEDの手配を依頼します。

もし協力者が得られない場合は、救助者自身が119番通報をして、AEDがすぐ近くにあることが分かっていれば取りにいきます。

ヤガミ 手嶋

まずは119番通報とAEDですね。

日本赤十字社 齋藤様

次に、傷病者が心停止を起こしているかを判断するために呼吸の確認を行います。

胸やお腹の動きを観察して、普段通りの呼吸があるかどうか。普段通りの呼吸がない、なんかちょっとおかしい、その判断に迷うといった時には次に進む、つまり胸骨圧迫を開始します。

ヤガミ 手嶋

判断に迷う場合は、そのまま心臓マッサージに進むというところは大事なポイントですね。

日本赤十字社 齋藤様

胸骨圧迫については、昔みたいに難しい事を今は言いませんので、「胸の真ん中を強く・早く・絶え間なく」という事を意識してください。

やり方はその人のやり方で構わないんですよね。成人であれば、胸が5cm程沈むぐらい圧迫するのですが、

だいたい30kgくらいの力が必要なんていわれているので、力はけっこう必要です。

一般的には、しっかり腕を伸ばして上から垂直に、小手先ではやらないで、圧迫後は十分に圧迫を解除して、、といったところですが、そういった事は是非講習などで人形を使って体験してもらいたいですね。

ヤガミ 手嶋

人工呼吸については、それをする技術、もしくは意思があれば行うということになっていますよね。 胸骨圧迫をしてAEDの到着を待ちながら、依頼していたAEDが到着したらAEDを使用すればいいんですね。

日本赤十字社 齋藤様

そうですね。電気ショックのあと、AEDは自動的に2分間おきに心電図の解析を始めるので、音声メッセージに従って、あとはこの2分間の心肺蘇生とAEDの電気ショック1回のサイクルを繰り返します。

ヤガミ 手嶋

2分間の心肺蘇生+必要に応じてAEDによる電気ショックを1回というサイクルですね。

2分間の心肺蘇生は、短いようで実際にやってみると長く感じますよね。

日本赤十字社 齋藤様

胸骨圧迫は結構体力を使いますからね。

特に夏の暑い時期に屋外でとなったら、2分ごとに交代といっても、2分経たずして結構きつくなってきますよ。

やっぱりそういう意味でも協力者が多い方が良いですよね。

今はだいたいいろいろな講習を受けた事がある、胸骨圧迫がだいたいわかる、と言った人も増えてきました。

運転免許を取るときもそうですし、中学・高校では学習指導要領の中に応急手当が含まれていて、特に高校ではAED・心肺蘇生を実技を伴ってできるところまでやっていますからね。

ヤガミ 手嶋

心肺蘇生はいつまで続けたら良いのでしょうか?もしくは止めても良いと判断するポイントなどはありますか?

日本赤十字社 齋藤様

人間の死の判断は、医師以外の人がしてはなりませんので、傷病者が嫌がって動き出したり、うめき声を出したり、見るからに普段通りの呼吸が現れたりしない限り、医師や救急隊などに傷病者を引き継ぐまでは、心肺蘇生を続けてください。

もし心肺蘇生を中止した場合でも、傷病者の状態を観察し続けてください。もしも再び普段通りの呼吸がなくなった場合には、心肺蘇生を再開します。

ヤガミ 手嶋

なるほど。これこそ先ほどの「観察に始まり観察に終わる」ですね。

一次救命処置(BLS)の手順

一次救命処置(BLS)の手順

 

 

AEDの使い方

AEDの使い方について教えていただけますでしょうか?

日本赤十字社 齋藤様

AED来て、何が一番大事か、という事で、「まず電源を入れましょう」という事を事を常に言っています。

電源さえ入れてしまえば、次やる事というのはしっかりAEDが音声で指示してくれるので、あとはその言うとおりにやれば大丈夫です。

ただ、機種によっては、蓋を開ければ電源が入る物や、電源ボタンを押すものなどもあるので、

電源ボタンがなければ、パッドを取り出したり、蓋を開けましょう。

電源を入れる事ができたそこから先については、正直そのままいう事を聞いていれば大丈夫といったところですが、最近はいろいろな多様性に配慮した機種もあり、音声がクリアに聞こえない方などに対して、液晶表示が出たり、機器にイラストが書いてあり手順がわかるようになっているものもあり、あまり難しい事を一つ一つ暗記して覚える必要はなく、本当に電源を入れる事がまずは大事なんです。

そこからは、まず衣服を脱がせて、音声ガイダンスの指示に従いパッドを素肌にパッドに書いてある絵の通り、しっかりと貼り付けるといった流れです。

ヤガミ 手嶋

まずはとにかく電源を入れる、そのあとは音声メッセージの言うとおりに電極パッドを貼り付けると。

日本赤十字社 齋藤様

電極パッドが肌にしっかりと貼られると、「傷病者から離れてください」という音声メッセージが流れて自動的に心電図の解析が始まります。

電気ショックが必要な場合は「ショックが必要です」などの音声メッセージが流れて、AEDのショックボタンが点滅するなどして電気ショックを行うように音声メッセージが流れるので、誰も傷病者に触れていないことを確認してショックボタンを押します。

ちなみに最近は「オートショックAED」という、ショックボタンを押さなくても自動で電気ショックが行われるAEDも普及が進んでいますので、オートショックAEDの場合はショックボタンを押す必要はありません。

ヤガミ 手嶋

AEDの使い方は以下の通りで、実際にやっている事というのは実は少ないんですよね。

  1. ①電源を入れる
  2. ②パッドを貼る
  3. ③ショックボタンを押す(オートショックAEDの場合は不要)

日本赤十字社 齋藤様

これまでの使用実績や研究のデータを見ると、AEDの心電図解析時に、患者から離れるようにAEDから指示が出ているけれど、胸骨圧迫を続けたままだったといった事が起こっていたデータもあり、数字で見ると、実際に電気ショックが必要だった患者に対して65%ほどは適切に電気ショックが行われているのですが、3割以上は電気ショックが必要なのに行われなかった、できなかったという事で、それがなぜかというのは、患者に触れていた事などで正しく解析できなかったもので、これには驚きました。

とにかくAEDの指示をしっかりと聞く、離れてくださいといったらしっかり離れましょうと、患者に触れないでくださいといったら触れないようにしましょうと、 これは普段の講習の中でもっと強調しないといけないなと感じたところです。

ヤガミ 手嶋

AEDからそのようなメッセージが流れているので普通はそれに従う事ができるはずなんですが、冷静にしていられれば大丈夫なんでしょうけど、やっぱり非日常という状況の中で、 あのAEDから流れる大きな音の音声メッセージも、意外とそのような場面になると、耳に入っているようで入っていないという事ですよね。

日本赤十字社 齋藤様

そうですね。頭が真っ白になるといわれる状況ですからね。

AEDを使用する際の注意点

AEDを使用する際の注意点などありますか?

日本赤十字社 齋藤様

特殊な状況として胸が濡れている場合、この時は電気が体表の水を伝わって流れてしまうため、電気ショックの効果が減少しますから、乾いた布やタオルで胸を拭いてから電極パッドを貼り付けます。

その他には、貼り薬や湿布薬などが電極パッド貼り付ける位置に貼られている場合には、まずこれを剝がして、残っている薬剤をふき取ってから電極パッドを貼り付けます。

ペースメーカーなど医療器具が埋め込まれている場合には、胸に硬いこぶのような膨らみが見えますので、その膨らみを避けて電極パッドを貼り付けます。

大事なのは時間ですので、このような特殊な状況でも電極パッドの取り付けに手間取って電気ショックをするまでの時間が遅くならないようにしてください。

 

女性に対してのAED

公衆の場で女性に対してAEDを使用する事に対しては気にする方も多いのですが、女性に配慮したAEDの使用方法などはありますか?

日本赤十字社 齋藤様

AEDを使用するときに衣服を全部はだける必要はなくて、しっかりと素肌に、心臓を挟み込むような形でパッドを貼り付けることができれば大丈夫となっており、女性の場合ブラジャーなどを身に着けている場合、それは必ず外さなくても大丈夫です。

ただし、金属物質がパッドと素肌の間に入ったり、電気が通る間に入らないようにはしなければなりませんが、そういったポイントを押さえておけば、衣服は全部脱がさなくても大丈夫なので、

女性に対してAEDを使用する場合には、状況に応じてそういった配慮などが必要になります。

特にこれに関しては、東京都多摩府中保健所より出されている資料がよく参考にされていますね。

講習では訓練用の人形を使うので、服を全部取り除いて素肌に直接パッドを貼りましょうという説明をしますけど、研究のデータでも女性に対してAEDの使用率が低い、学校であれば、高校生になると男子生徒と比較して女子生徒へのAED使用率が大きく下がるという結果もあり、どうしてもやはり女性の衣服をはだける事へのためらいとか抵抗感はあると思います。

AEDの解禁から20年経って、解禁当初はそういった事は特に言われなかったんですよね。

今まではとにかく素肌にしっかりと貼りましょうといった感じで、講習会でも何も考えずに、まずは服をはだけて、、、と。

貼る位置をどこに貼るのかなど、大切なポイントをわかりやすくという事もあると思いますが、ただ最近はそういった基本をそのまま教えるだけでなくて、解禁から20年経った今、女性に対する実施率が落ちるといった課題がある現実の中で、それをどう課題解決をするかということも考えなければならないと考えています。

ヤガミ 手嶋

なるほど。確かに20年前はそんな事を言われなかったという事ですよね。逆に言うと、この20年でAEDの普及が進んだからこそ、その中で出てきた新しい問題や課題というところですね。

日本赤十字社 齋藤様

そうですね。 昔は本当に最低限のやり方を少しでも多くの人にという形でしたけれど、講習は消防だと年間で約200万人、日赤では年間約50万人(コロナの影響を受ける前)、これを20年間、これまでの間に、AEDを広く広げるという事はだいぶできてきたので、これからは本当に具体的な事例で、課題になっていることをどう解決していくかというところが大切になってきています。

ヤガミ 手嶋

なるほど。AEDが解禁されて20年たった今、AEDは設置されて当たり前なものになった一方で、次はその設置されたAEDが当たり前に使用されるものになるために、新たな問題や課題がわかってきたという事ですね。

また次の解禁から30年後はAEDがどうなっているのか、その時に過去を振り返る際にも、本日のお話は非常に有意義な内容でした。本日は本当にありがとうございました。

日本赤十字社 齋藤様

今回のようなお話だけでなく、引き続き講習を通じて多くの人にAEDやそれにかかわる様々な事を知っていただければと思います。

様々な講習がありますが、丁寧に時間をかけてやりたいなら日赤は特におすすめです。

一番短時間の資格認定講習でも5時間、そのうち実技練習時間は4時間あるので、しっかりと練習できます。

本日はありがとうございました。

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